がっかり久保田の山の酒

残念だった山の酒・久保田雪峰

別に説法するわけではないが、新たなジャンルを切り開くとして、今年9月に投入された久保田の純米大吟醸・雪峰ががっかりだった。
この日本酒は、同じ新潟のアウトドア用品メーカー・スノーピークと共同開発したと鳴り物入りで登場したが、広報に重点が置かれた感があり、ジャンルを切り開くという意気込みの割には、どうも焦点がはっきりしていない。

輝かしい久保田の歴史にこんな酒があっていいのか?

「久保田」と言えば、端麗辛口ブームを巻き起こし、現在でも国民の認知度が高い名酒。久保田会という専門店組合を組織し、美味しく日本酒を楽しんでもらうためにはどうすればよいかを、流通側とともに確立していった手法は画期的で、流通革命を起こしたことでも知られている。

しかし、端麗辛口から脱しつつある現在の日本酒ブームにあって、大手から中堅どころは大きな挑戦がままならず苦戦している現状がある。久保田にあっても例外ではなく、かつて上級酒として君臨した地位は、相対的に低下している。それを打開しようと、このところ次々と新商品を発表しているようだが、どうも、数打ちゃ当たる的な酒ばかりだな・・・と私は思う。異分野とのコラボで市場拡大を狙った雪峰は、まさにその最たるもの。

アウトドアで飲む酒って何だ???

雪峰は、キャンプ料理に焦点を合わせて、濃いめの味にマッチすることを謳っているようだが、もともとそこは久保田の得意とする分野。むしろアウトドアでの飲料は水分補給を意識することになり、それが故に、これまではビールが重宝されてきたのである。日本酒は、ビールほどアルコール度数が低くはなく、ウィスキーのように水割りを楽しめる酒でもない・・・そこがアウトドアでは敬遠されているのである。

今年は、三重の清水清三郎商店が、三菱ケミカルと共同で濃縮日本酒「Concentration 作 凝縮 H」を作ったというニュースもあった。むしろこちらの方が、アウトドアには合いそうな気がする。濃縮された日本酒を、自然の水で戻して飲むというのならば、未踏の地に夢を見ることだってできる。もしそれが、登山対象の山麓でとれた米を原料にした酒であったなら、酒を携えた登山の意味づけは、如何様にもできよう。

しかし雪峰は、アルコール度数16度のまま、多少の味覚の違いを特徴として、小さな500mlのボトルに詰め込んでしまった。しかもボトル形状が一升瓶型を脱することなく、持ち運びには不便。ビールならば缶をつぶしてでも持って帰るが、これでは飲み終えた後に荷物になるだけ。アウトドアと言っても、車でちょいと出るくらいのものを想定しているのであれば、ジャンルなど決して確立されないだろう。清水清三郎商店のようなことが出来ないのであれば、せめてパッケージデザインに凝る工夫をして欲しかった。持ち帰りの利便性を考慮するだけで、大いに購入者は増えると思うのだが。なぜなら日本酒は、温めて飲むことが出来る、他にないアウトドアでの有利性を持っているから。(G)

久保田は日本酒の伝道師

端麗辛口の代表 久保田

日本酒ランキング「高品質な日本酒」を合言葉に、生産現場から食卓まで、人々を感化しながら生産を拡大してきた久保田。「世界」を視野に入れた日本酒業界にあって、栄光の歴史を持つ久保田は焦りを感じているように見える。

しかし、連綿と醸し続けてきたその日本酒は嘘をつかない。萬壽を飲めば、久保田はやはり久保田である。品質の久保田である。それを、変な色気を出して、特徴もない日本酒に不相応なラベルを貼り付ける必要があるだろうか。「雪峰」は、雪山をイメージして部屋飲みするのならいい。しかし、野外に持っていく酒ではない。それこそ、変化の激しい環境下に置くことは、久保田が最も嫌ったことではないか。

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