ダサい酒が世界を変える

獺祭忌には、圧倒的人気の酒を飲む。

9月19日は獺祭忌。俳人・正岡子規の命日です。正岡子規は、酒が弱かったと言われていますが、嫌いではなかったようです。
その正岡子規ゆかりの日本酒が、現代では人気ナンバーワンの日本酒となっています。美味しい酒として、これまで日本酒に見向きもしなかった人をも取り込み、ファンに変えているのです。
その日本酒の名は「獺祭」。秋の夜長に、そばに置いておかなければならない日本酒です。

獺祭の名前の由来

しかし、なぜ「だっさい」などという名前をつけたのでしょうか。1990年にはじめて、現在の「純米大吟醸50」につながる清酒が販売されたのですが、「獺祭」の文字が読めず、注文するのもためらわれました。それを「だっさい」と読むと知った時には、仲間と「ダサい!?」と言って笑い合ったものです。
当時はまだ知る人ぞ知るといった感じでした。馴染みの店で「ダサい酒」と言って注文すると、面白がられて他にも注文が入ったみたいで、その店では「ダサい」で通っていました。しかし店主も、「獺祭」の由来は知りませんでした。

獺祭獺祭・・・これは、獺(カワウソ)の魚を並べる習性を指します。そこから、文章を書く時に参考書を出し広げることに転じ、かの正岡子規が自らを獺祭書屋主人と称したとのことです。
獺祭の蔵元は、正岡子規の生まれ故郷・愛媛県にある松山商科大学(現・松山大学)経営学部卒業。日本文学に革命を起こした正岡子規にあやかり、「獺祭」に変革と革新の決意を反映させたと言います。そして現実に、それまでの日本酒のイメージを次々とぶち壊しているのです。

時代に求められた酒

今日の獺祭ブームが来るまで、日本酒と言えばオヤジのドリンクであって、まさに「ダサい飲み物」の代名詞でした。かつて同じ位置づけにあった「芋焼酎」が、新しい麹などの開発で風味を変え大ブームを起こしたのを、指をくわえて見ていなければならないといった悲しい状況にありました。
獺祭の醸造元・旭酒造も経営危機に陥るほどの苦境に立っていたといいます。しかし、ピンチにこそ本当のチャンスが潜んでいるとはこのことでしょう。変革に失敗し、杜氏にそっぽを向かれたのを機に、社員制へ移行したのです。
現在でも、日本酒蔵の社員制というと「???」ですが、これが結果的に安定した品質を生み出すことになったといえます。古くからの知恵は、確かに無視できないものですが、反対に革新の足かせになっていたということでもあります。
この、社員制への移行による改革は、日本酒業界に大きな衝撃を与えました。これまで、日本酒と言えば季節を読みながら生産するのが当たり前で、従事者も季節工として雇われることが多かったのですが、社員制への移行により必然的に四季醸造を念頭に置くことになりました。
四季醸造とはつまり、寒い季節のみならず、暑い季節にも日本酒を醸造することを意味します。ということは、人の手で製造環境をコントロールしなければならないということです。
自然環境に仕上がりを任せていた時代には、出来上がる商品のばらつきが大きく、運が悪ければ商品にならないといった事態をも招きます。四季醸造では、人為的に最適な生産環境を整備するため、品質が安定してきます。
はっきりいいます。真の名酒は、品質こそが重要です。品質は、味わいとは別物です。ひとの嗜好に左右される味わいとは違い、品質には、製造する者の哲学が反映されます。だからこそ、そこに、いかなる試練にも立ち向かえる強い商品が生まれてくるのです。

獺祭の現在と未来

世間の嗜好の変化が、それまで主流だった端麗辛口から移行し、獺祭に衝撃を覚えたこと。それを需要面で長期的に支える実力を備えていたこと。これが、現在の獺祭ブームの実態だと言えます。
しかし、獺祭が凄いのは、同じ場所に留まっていないこと。製造面では遠心分離など、古来の醸造手法にはありえない技術の導入にも積極的で、新しい日本酒をつくりだすことをも厭いません。また、スウィーツとの組み合わせなど、従来にない日本酒需要の発掘にも積極的で、新たなファンを次々と獲得しています。
そのような中、設備導入で増産体制が整ったとも聞きます。われわれ庶民にとっては、その分価格面への反映を望むのではありますが、好調な海外需要もあって、やはり入手困難な日本酒として君臨し続けるのかもしれません。それでもやはり、特別な日には、裏切ることのないあの獺祭を探しに行きたくなるのです。

おすすめの獺祭

日本酒ランキング獺祭と言っても、いろんな種類があります。ただし、どれも純米大吟醸酒といって、通常の日本酒よりも精米歩合の高い贅沢なつくりとなっています。その結果、あのようにフルーティーで、えもいわれぬ味わいとなるのです。
ところで、この獺祭、はじめて飲むにはどれがいいのか?
そりゃ、いきなりオバマ大統領やプーチン大統領へもプレゼントされたといわれる 磨き その先へ を飲むというのもありですが、一般には「獺祭三割九分から」と言われています。これは、獺祭の中では精米歩合も中くらいの39%。獺祭は値段が高いというイメージがあるかもしれませんが、同スペックの他社商品よりコストパフォーマンスに優れるといった声もあります。味わい的にも、味と香りのバランスが非常に優れた驚きの酒です。

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